小粋

刻み煙草――。
それは江戸時代から続く煙草葉の製法で、煙管のお供として長い間親しまれてきました。
しかし、手軽な紙巻煙草が主流になると煙管は時代に取り残され、それと同時に刻み煙草も下火になってしまったのです。
寂しい限りです。

とは言え、わたしも刻み煙草を知ったのはごく最近。
それまでは存在も知りませんでした。

ですが、今はわたしの手元に煙管があり、これも何かのご縁ということで値は弾みますが、刻み煙草を買ってみました!

小粋です!

価格は480円。
価格だけを見るとお安い感じがするのですが内容量は10gです。
ワンコインシャグのレッドフィールドが500円で20gですので、約二倍ほどのお値段ということに……。
やはり刻み煙草は高いです……。
でも、国内産の煙草葉を使っていますし、伝統を嗜むと思えばお安いのかもしれません。

価格:480円
内容量:10g
グラム単価:48円

外観

パウチではなく小箱に入っています。
このように一風変わった梱包ですと、なにか特別な物を手にしたような気持ちになり否が応でも期待に胸が膨らみます。

しかも、一度消えた刻み煙草の国内製造に再び明かりを灯した立役者でもあるのですから、その特別感たるや言葉に言い表すことができません。
もし、小粋が製造されていなければ、刻み煙草どころか煙管文化が日本から消えていた可能性も――。
そう思うと、とても感慨深い気持ちになります。

小箱をスライドさせると和紙(?)のようなものが姿を現します。
ちなみに、小箱の雰囲気にのまれて和紙と思い込んでいるだけで、本当に和紙かどうかは分かりません。
ただの願望です。

でも、これが本当に和紙だったらとても嬉しいのになあと思わずにはいられません。

これが唯一の国産刻み煙草の御姿です!
公式サイトには日本在来の煙草葉(松川葉、達磨葉、水府葉、出水葉、指宿葉)をブレンドし、刻み幅は0.1cmと書かれています。
それがどれほど凄いことなのかは想像でしか測れませんが、それでも唯一の国産刻みブランド、日本在来の煙草葉、熟達した職人技と言う文章を読むだけでわくわくしてしまうのです。

そして、刻み煙草に触れてみると――。
まるで小動物でも触っているのではと錯覚するほどの柔らかい感触が指先から伝わります。
明らかにシャグとは違います。
これがどのような喫味を生み出すのか、嗜むのが楽しみでしかたありません。

……でも、その前にやることがあります。

加湿

煙草屋さんに「吸う前に1日くらい加湿してね」と言われましたので、素直に従い加湿することにしました。

やり方は、口を開けたままの小粋とヒュミストーンをタッパーに入れて密封するだけだそうです。
簡単です。

ちなみに、加湿をしないと摘まんだときに粉々になるよと言われました。
でも、加湿をしすぎるとカビが生えるよとも言われていますので、どうすれば良いのか分からず困惑しております。

喫味

言われるがままに加湿をして一日経ちました。
これと言って目立った変化はありませんが、刻み煙草の触り心地はしっとりとしているような気がしますし、カビらしきものも見当たりませんので、これで成功……なのでしょうか?

成否のほどは分かりませんが、くるくると丸めても粉末にはなりませんので、これで上手くいったのかな、と……。
たぶん。

――それでは、早速。
刻み煙草をひと摘まみほど取り、火皿に詰めて嗜んでみたいと思います。

火皿に火を近づけ、軽く吸い込むと――。
煙草葉の甘味と青々しいイグサのような香りが口の中に広がります。
その喫味からはそこはかとなく和を感じ取ることができるのですが、これは刻み煙草の歴史を読み、大いに感銘を受けたからなのでしょうか?

よく分かりませんが、少なくともこれだけは断言することができます。
とても美味しいです!

煙管で嗜むシャグもそれはそれで美味しいのですが、刻み煙草は刻み煙草でまた別の趣があります。
優劣をつけることはできません。

ですが、それなりに雑に扱っても大丈夫なシャグとは違い、刻み煙草の取り扱いはとても繊細な気がします。
もちろん、わたしが慣れていないと言うのもあるのですが……。
もし、初めて煙管を嗜むのでしたら、まずはシャグで慣れてから刻み煙草を試した方が無難かなと思いました。

結論

売り上げが減少し一度は消えた刻み煙草。
ですが、伝統を残すべきと言う強い要望に応えて生まれたのが小粋です。
このような歴史を顧みると、普段から「高すぎます!」と言っているわたしでさえも納得できる価格のように思えてきました。

これは――。
伝統を嗜んでいるのです!

約20年ものあいだ唯一の煙管用刻み煙草として販売され、後世へと道を残した刻み煙草。
それが小粋なのです。
――なんて粋なのでしょう!
これを切っ掛けに他の刻み煙草も試してみたいなと思いました。

もし、煙管を嗜んでみたいなと思われている方がいましたら、最初は扱いの簡単なシャグを嗜み、慣れてきた頃に試してみるのも一興かと思います。